病院のクラウドファンディング|仕組みと事例、広告表現の注意点

病院がクラウドファンディングで設備や災害復旧の資金を集める事例が増えています。ただし病院は医療広告ガイドラインの対象になる立場でもあり、書き方を誤ると広告規制に触れかねません。この記事では、READYFORが公式に発表した実績と、READYFOR自身が公開しているインタビューで確認できる事例をもとに、病院のクラウドファンディングの仕組みと、購入型・寄付型の違い、医療広告ガイドラインで気をつける表現を整理します。
病院のクラウドファンディングとは
病院のクラウドファンディングとは、医業収入(診療報酬など通常の病院収入)以外の方法で、設備更新や災害復旧、地域医療の維持にかかる資金を、インターネット上で不特定多数の支援者から集める仕組みのことです。READYFORの仕組みを解説した記事で触れているとおり、READYFORは社会貢献・地域医療系のプロジェクトに強いプラットフォームで、2017年頃から医療機関の活用が広がってきました(READYFOR株式会社プレスリリース、2026年9月28日確認)。支援者は寄付や購入という形でお金を出し、病院側はその資金で医療機器の導入や施設の復旧に充てます。
購入型と寄付型の違い
クラウドファンディングは、支援者が受け取るリターン(お返し)の形態で「購入型」「寄付型」「金融型」に分かれます。経済産業省中小企業庁の案内によると、購入型は支援した金額に応じて経済的価値のある返礼品を受け取る方式で、国内のクラウドファンディングはほとんどがこの購入型です(中小企業庁「みらサポplus」、2026年9月28日確認)。一方の寄付型は、一般的な寄付と同じくリターンを原則設定しない方式で、お礼状やメッセージ程度にとどまります。
本サイトは購入型クラウドファンディングの代行会社を紹介するサイトで、寄付型は対象外です。 病院のプロジェクトには、感謝状や施設内への掲示、報告書の送付などをリターンとする購入型に近い設計と、税務上の扱いが異なる寄付型の両方があるため、実施前にどちらの型で募集するか、税理士や運営元に確認してください。
「クラウドファンディング」という言葉だけでは購入型か寄付型か分かりません。病院のプロジェクトページで、リターンの有無と内容を確認してください。
READYFORの医療機関向けクラウドファンディング、公開200件の内訳
READYFORは医療機関向けのクラウドファンディングを2025年5月12日付の公式発表で振り返り、医療機関によるプロジェクトの公開件数が200件に到達したと発表しました。累計支援額は約30億円で、2024年に医療機関が公開したプロジェクトの支援総額は前年の1.4倍に増加したとされています(READYFOR株式会社公式発表、2026年9月28日確認)。件数だけでなく金額も伸びている点が、この2年間の特徴です。
100件到達までの経緯
同社は2024年2月20日付の発表で、医療機関のクラウドファンディングが100件に到達したことも明らかにしています。この発表によると、2023年に実施されたフルサポートプラン(READYFORの手数料プランを解説した記事で扱っている運営代行付きのプラン)のプロジェクトは、95%以上が目標金額を達成したとされています。
同社の調査では、予算の制約で実現できない取り組みがあると回答した医療機関が9割以上にのぼり、院内・院外の改修に予算のめどが立っていない病院も8割以上にのぼるとされ、こうした背景がクラウドファンディング活用の広がりにつながっているとREADYFORは説明しています(READYFOR株式会社プレスリリース、2026年9月28日確認)。
| 発表時期 | 医療機関の公開件数 | 主な数字 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 2024年2月20日 | 100件到達 | フルサポートプランの達成率95%以上 | READYFOR株式会社プレスリリース |
| 2025年5月12日 | 200件到達 | 累計支援額約30億円、2024年の支援総額は前年の1.4倍 | READYFOR株式会社公式発表 |
表の数値はいずれもREADYFOR株式会社が公式に発表したもので、当サイトが独自に集計した数字ではありません(2026年9月28日確認)。
注意 ここに挙げた件数・金額はREADYFOR1社の公式発表にもとづくものです。他のプラットフォームでの医療機関の実施件数は、各社が同じ形式で公表しているとは限りません。
病院のクラウドファンディング事例(確認できた支援額と支援者数)
病院のクラウドファンディング事例の多くは、READYFOR自身が「病院・導入事例」として公開しているものです。ただし個別のプロジェクトごとに支援総額・支援者数を明記しているページと、経緯だけを紹介しているページがあります。ここでは金額まで確認できた事例として、恵寿総合病院のケースを紹介します。
恵寿総合病院 能登半島地震の災害復旧
石川県七尾市の恵寿総合病院は、2024年1月1日の令和6年能登半島地震で施設に大規模な損壊被害を受けました。全国から個別に寄せられた支援の申し出への対応が難しい状況の中、経営層が支援の窓口をクラウドファンディングに一本化すると判断し、発災からわずか4日後の1月5日にREADYFORでプロジェクトを公開しています。
目標金額1,000万円に対し、支援総額は1億954万7,000円、支援者数は2,496人にのぼり、達成率は約1,095%でした(READYFOR公式インタビュー記事、2026年9月28日確認)。この事例は、READYFOR自身が「医療機関関連プロジェクトで最高額」と紹介しているものです。
そのほかの導入事例
READYFORの「病院・導入事例」ページには、複数の医療機関のインタビューが掲載されています。
- 済生会
- 名古屋掖済会病院
- 大雄会第一病院
- 友愛医療センター
- 桐生厚生総合病院
ただしこれらのページの多くは、プロジェクトを始めた経緯や院内の反応を紹介する内容で、支援総額・支援者数までは明記していません。本文では、公式ページで金額・人数が確認できたプロジェクトだけを数字付きで紹介しています。 具体的な事例を検討する際は、各病院のプロジェクトページを直接確認してください。
医療広告ガイドラインで気をつける表現
病院がクラウドファンディングのページや活動報告で情報発信する際は、厚生労働省の医療広告ガイドライン(正式名称「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針」)の考え方に沿う必要があります。同ガイドラインは、患者等を誘引する目的があり、医療機関の名称が特定できる情報発信を広く「広告」として扱う立場を取っており、クラウドファンディングのページや報告文もこの考え方の対象になり得ます(厚生労働省、令和6年9月13日最終改正版、2026年9月28日確認)。
比較優良広告・誇大広告にあたる書き方
同ガイドラインは、他の医療機関と比較して自院が優良である旨を示す「比較優良広告」(例、「地域で一番の治療実績」)や、事実を不当に誇張したり誤認させたりする「誇大広告」、内容が事実と異なる「虚偽広告」を、医療に関する広告として認めていません。クラウドファンディングのプロジェクトページで支援を呼びかける際も、効果を保証したり安全性を断定したりする表現(下表の例を参照)や、他院との優劣を示す表現は避け、導入する設備や実施する取り組みの事実を具体的に書く必要があります。
患者の体験談は広告としてそのまま使えない
同ガイドラインの根拠となる省令(医療法施行規則第1条の9第1号)では、患者その他の者の主観または伝聞にもとづく、治療等の内容や効果に関する体験談の広告を禁じています。個々の患者の状態によって感想は異なり得るため、誤認を与えるおそれがあるという考え方にもとづく規定です(厚生労働省、2026年9月28日確認)。クラウドファンディングの活動報告で患者の声を紹介する場合も、治療効果を保証するかのような引用は避け、事実関係(導入した設備、実施した取り組み)を中心に書くことが求められます。
「支援してくれた方への感謝」と「治療効果の宣伝」は別物です。活動報告は感謝と進捗の事実に絞り、効果を保証する言い方にならないよう見直してください。
| 気をつける類型 | 該当する表現の例 | ガイドライン上の扱い |
|---|---|---|
| 比較優良広告 | 「地域で一番の実績」「他院より優れた治療」 | 認められない |
| 誇大広告 | 「絶対安全」「必ず良くなる」 | 認められない |
| 体験談の広告 | 患者の感想を治療効果の根拠として引用 | 省令で禁止 |
表の分類は厚生労働省の医療広告ガイドライン(令和6年9月13日最終改正版)にもとづく整理です(2026年9月28日確認)。個別の表現が該当するかどうかの最終判断は、都道府県・保健所や弁護士など専門家に確認してください。
病院がクラウドファンディングを始める前に整理すること
ここまでの実績・事例・広告表現をふまえると、病院がクラウドファンディングを始める前に整理すべき点は、目的と資金使途を数字で示すこと、支援の窓口を一本化すること、広告表現を院内で事前にチェックする体制を作ることの3つです。この3つを事前に整理しておくと、公開後に支援の申し出への対応や表現の見直しに追われずに進めやすくなります。
- 資金使途を「設備更新に◯◯万円、うち機器本体が◯◯万円」のように内訳で示す
- 目標金額は必要な費用の積み上げから決め、達成後の使い道(ネクストゴール)もあらかじめ検討する
- 支援の申し出を受ける窓口をクラウドファンディングのページに一本化し、個別対応の負担を減らす
- 活動報告・ページの文言は、医療広告ガイドラインの観点で院内の複数人が確認してから公開する
窓口を一本化する(恵寿総合病院の例)
恵寿総合病院の事例で参考になるのは、支援したいという申し出が全国から相次いだ際に、経営層が早い段階で「クラウドファンディングに窓口を一本化する」と判断した点です。通常の診療・復旧作業と並行して個別に対応するのは現実的でないという判断から、発災4日後という短期間での公開につながりました(READYFOR公式インタビュー記事、2026年9月28日確認)。災害対応に限らず、設備更新など計画的なプロジェクトでも、問い合わせ窓口を一本化しておくと、院内の負担を抑えられます。
自分で進める病院、代行に依頼する病院
クラウドファンディングのページ制作や広告表現のチェックは、病院の広報担当者が自院で進めることもできますが、医療広告ガイドラインへの目配りやリターン設計に不安がある場合は、購入型クラウドファンディングの代行会社に相談する選択肢もあります。当サイトが掲載する代行会社52社のうち、READYFORへの対応を明記しているのは6社です(2026年9月24日時点)。
自分で進める病院
- 広報担当者がページ制作・文章作成を担える
- 院内に医療広告ガイドラインを確認できる担当者がいる
- 資金使途と目標金額を数字で説明できる
READYFORの担当者による審査・助言を受けながら進められる範囲です。
依頼を検討する病院
- ページ制作や写真・動画の準備に人手が割けない
- 広告表現のチェック体制を外部の目でも確認したい
- リターン設計を購入型として整えたい
READYFOR対応を明記する代行会社6社の中から、支援範囲を絞って相談できます。
代行会社を探す
READYFORでの実施を検討していて、ページ制作や広告表現のチェックまで相談したい場合
当サイトでは代行会社52社を、対応プラットフォーム・支援範囲・料金の公開状況で絞り込めます。
条件で絞り込むよくある質問
病院のクラウドファンディングについて、検討段階でよく聞かれる4つの疑問にまとめました。実施件数や支援額、購入型・寄付型の違い、医療広告ガイドラインとの関係を中心に取り上げています。数値はいずれもREADYFOR株式会社の公式発表と公式インタビュー記事に2026年9月28日時点で記載されていたものです。
病院のクラウドファンディングはどれくらい実施されていますか
READYFOR1社の公式発表によると、医療機関が公開したクラウドファンディングは2025年5月時点で200件に到達し、累計支援額は約30億円です。ほかのプラットフォームでの医療機関の実施件数は、READYFORと同じ形式で公表されていないため、本文では確認できたREADYFORの数字のみを紹介しています。
病院のクラウドファンディングは購入型ですか、寄付型ですか
プロジェクトによって異なります。感謝状や施設内での掲示、報告書の送付といったリターンを設定するものは購入型に近い設計で、リターンを原則設定しないものは寄付型です。本サイトが対象とする購入型クラウドファンディングとしてページを作る場合は、リターンの内容と経済的価値の有無を明確にしておく必要があります。寄付型で実施する場合は税務上の扱いも異なるため、税理士に確認してください。
医療広告ガイドラインはクラウドファンディングのページにも適用されますか
医療広告ガイドラインは、患者等を誘引する目的があり、医療機関の名称が特定できる情報発信を広く「広告」として扱う立場を取っています(厚生労働省、2026年9月28日確認)。クラウドファンディングのページや活動報告も、比較優良広告・誇大広告・体験談の広告に該当しないか、公開前に確認しておくのが安全です。個別の表現が該当するかどうかの最終判断は、都道府県・保健所や弁護士に確認してください。
病院が代行会社に依頼するメリットは何ですか
ページ制作や写真・動画撮影、リターン設計といった工程を、院内の人手をかけずに進められる点です。当サイト掲載52社のうちREADYFORへの対応を明記しているのは6社で、料金や支援範囲は各社の公式サイトで確認できます(2026年9月24日時点)。広告表現のチェックについても、外部の目を入れることで院内だけでは気づきにくい表現を見直せます。
まとめ
病院のクラウドファンディングは、READYFORの公式発表で2025年5月時点で公開200件、累計支援額約30億円に達しています。恵寿総合病院のように支援総額1億円を超えた事例もありますが、金額まで公表しているプロジェクトは一部です。実施にあたっては、購入型と寄付型の違いを整理し(寄付型は本サイトの対象外です)、医療広告ガイドラインが禁じる比較優良広告・誇大広告・体験談の広告に触れないよう、院内でページの文言を確認する体制を整えてください。ページ制作や広告表現のチェックに不安があれば、READYFOR対応の代行会社に相談する方法もあります。
出典(2026年9月28日確認)。READYFOR株式会社「医療機関によるクラウドファンディング公開件数が200件に到達」、READYFOR株式会社「医療機関のクラウドファンディングプロジェクトが100件に到達」、READYFOR「病院の新たな挑戦を医業収入外で」、READYFOR「恵寿総合病院様のクラウドファンディングの舞台裏」、経済産業省中小企業庁「不特定多数の人から資金を調達「クラウドファンディング」」、厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」。当サイトの社数は掲載52社の公式サイト記載を集計したものです。
